前回と同じサンプル症例を出します。
サンプル症例:
70歳男性
サンプル1)最近、外に出かけることなく、受け答えも鈍くなってきた。認知症なのではないかと心配になった家族とともに受診(内科外来パターン)
サンプル2)この3週間ほど、受け答えが鈍くなってきた。言動もおかしい。お手洗い(排尿)が間に合わずに失禁してしまったことも。本日、家族が帰宅してみると朦朧としており慌てて救急要請(うちの救急外来パターン)
「認知症かもしれない」「様子がおかしい」とご家族が言われるときに、
『何がどれくらいできて、何がどれくらいできないのか』の把握は診療上必須です。
ですが、ご家族の話を受動的に聞いているだけではなかなか全体像がつかみにくいことも、臨床をしつつ痛感しておられると思います。
そのために、当院ではADL iADLの型 「DEATH SHAFT」を共有しています。*1
ADL
D: Dressing 着替え
E: Eating 食事
A: Ambulation 歩行
T: Toileting 排泄
H: Hygiene 清拭
iADL
S: Shopping 買い物
H: Housekeeping 家事・掃除など
A: Accounting 口座管理
F: Food preparation 食事準備
T: Transportation 移動・交通機関
はじめは覚えるのに時間がかかるかもしれませんが、これを施設内で共有することで臨床が明らかにスピードアップします。ぜひ使い始められてください。
認知症評価以外にも、例えば救急外来でSpO2 80%(リザーバー8L)で搬送された重症肺炎、78歳男性に、挿管管理をするか、非侵襲的な管理のみ行うかの判断をご家族とともにせざるを得ない状況は良く経験されると思います。そのような状況でも『DEATH SHAFT』の聴取で『その方の日常の全体像』が『ビデオで見るように』把握でき、より適切な方針の相談を最も時短で行えると、当院のメンバー皆で実感しています。
『うちのおばあちゃん、元気でなんでもできますよ』という方でも、口座の管理や料理はとっくにできなくなっている方もあれば、『要介護4』に認定されていも、介護タクシーを自ら手配して出掛けられるような、脊髄損傷の方もあります。
私たちの部署は、救命救急センターとそのICUだからこそ、「はじめまして」の患者さんも多いです。ですが「もともとどんな方かわかりませんので、方針が立てられないですね」では医療が進みません。
医療は「何が正しい」ということは言えないからこそ、その方のふだんの状況を『手に取るように』把握したうえで、ご本人and/or ご家族と相談してゆくしかないと思います。
ぜひ、早速、使われることをお勧めします。
追: 私も、今日も、使いました。
*1:Hospitalist 2016 vol.4 pp.174-178