Dr.Yukaの5分間ティーチングブログ

聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 救命救急センター 北野夕佳の5分間ティーチング連載ブログです。日々の臨床で必要な知識を「型」として蓄積するブログです。

急性期脳梗塞の型_超基本_JC20選動画あり

急性期脳梗塞(疑い)の型_超基本

  •  ABC
  •  NIHSS
  •  血糖チェック
  •  頭部単純CT(目標20分以内)
 平行して
  1. 神経内科 or  脳外科コール
  2.  ルート確保、採血(優先は血算、凝固).動脈穿刺は基本的に禁
  3.  胸部レントゲン、心電図
  4.  体重測定(∵tPA投与量決定)
  • tPA<4.5時間
  •  Door to needle time 目標60分以内
  •  tPA投与するなら BP goal <185/110
  • 6時間以内かつICA or MCA-M1閉塞→もともと血管内治療の適応
  • ガイドライン改定点:16~24時間以内でも、下記は血管内治療適応となりうる (DAWN, DIFFUSEの2本のtrialをうけて)
  1.  DWI-clinical mismatchかつ
  2.  ICA or MCA-M1閉塞かつ
  3.  もともとのADLが良い(mRS 0 or 1)

 

(●時間は、すべて最終未発症時間から●時間の意)

 

上記は、下記の動画と一緒に見てもらえるとより理解できます。

 

厳選論文20選!!動画一部公開!!
ACP日本支部総会で毎年やっている平岡栄治先生総監督(+八重樫牧人先生、北野夕佳)の超人気セッション。
そのデモ動画が完成しました。

1)当院の堤健先生の論文紹介
2)北野のまとめ
3)当院の気楽な紹介 の構成です。

ぜひ見てみてください。
ACP日本支部総会に参加すれば、この1)2)が、各分野聞けます。すごいでしょ? 

私もこのセッションのおかげで、化石化せずに各分野なんとかしがみついています。
ぜひ2019年ACP日本支部年次総会(2019.6.8-9 京都)でお会いしましょう。
素晴らしい動画作成いただいたAntaaの藤井達也先生に感謝。

 

【動画URL】

神経
https://youtu.be/E_mtUDPQYvE

非代償性肝硬変_肝性脳症のマネジメント_In the Clinicシリーズ

肝性脳症の誘因・治療・予防の型 

 

肝性脳症の誘因:(文献1 注1

l  脱水

l  消化管出血 (特に、胃食道静脈瘤)

l  タンパク質摂取過多

l  感染 (特にSBP

l  K血症

l  便秘

 

肝性脳症の急性期マネジメント 文献1、2

l  蛋白制限食(注2

l  ラクツロース経口or経管(経口も経管も不可なら注腸も)(注3
  ハミガキ粉の硬さの排便が2~4/ 目標

l  非吸収性抗菌薬  

l  分枝鎖アミノ酸製剤の点滴 
(エビデンスは弱いが、日本では投与しても妥当:文献3)

 

注1:肝性脳症症例を診た時に「アミノレバン点滴しています」だけではなく、これらの誘因がないかの評価を速やかに行うことが重要。具体的には、問診・診察、特に腹水の有無、直腸診も。穿刺しうる腹水があれば、SBPを念頭に腹水穿刺を検討。アミノレバン点滴のみで入院させておいたら、敗血症性ショックでショックバイタルになった、などということのないように!

SBPSpontaneous bacterial peritonitis.

 

注2 ただし、肝硬変症例に漫然と蛋白制限をすることはむしろ望ましくない。急性期を過ぎたら、通常通りのタンパク質摂取を。必要なら少量頻回摂取をすすめる(文献4)

 

注3
注1と同じく、

「肝性脳症で入院後Day3です。アミノレバン点滴で治療しています。」

「排便コントロールは?」

「えっと、、、、(看護記録を見返す)入院後まだ排便ありません」

「?!?!」ということのないように!!
米国には分枝鎖アミノ酸製剤点滴は存在しませんでした。

アミノレバン(or テルフィス)点滴という選択肢がないことでむしろ、
「肝性脳症
→①誘因の検索 ②ラクツロース ± 非吸収抗菌薬内服(経管)投与でアンモニアを下げる」という概念がすっきりしていたのは良かった気がします。

処方例:

ラクツロース経口(or経鼻胃管)20ml and/or 注腸(ラクツロース150ml+微温湯200ml)

非吸収抗菌薬 リファキシミン1200㎎ 分3

 

文献

 内科ポケットレファランス 日本語版 3-22

 総合内科病棟マニュアル 256-258

 内科レジデントマニュアル 第7
4 UptoDate Hepatic encephalopathy in adults: Treatment last updated: Aug 17, 2017

 

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2018.12.21 追記:

リファキシミンが採用されていない場合に、代替薬はありますかの質問に対して:

肝性脳症の内服抗菌薬:

保険適応がある日本に存在する薬剤はリファキシミン(リフキシマ®)のみ注4

 

注4

あまり「重箱の隅」にならぬように気遣いつつ私の思考過程・聞き込み過程を下記にシェアしますね。

 

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北野→大崎往夫先生

北野→当院薬剤師さんへのメール:

 

お知恵を借りたいたことがあります。

 

肝性脳症の予防・治療の内服抗菌薬、

リフアキシミン以外で、日本で使えるもの何がありますか?

 

私の頭からすぐ出るのはカナマイシン3グラム分3ですが、カナマイシンは少量吸収されうるので聴覚障害/腎機能障害のリスクと肝性脳症の治療・予防のベネフィットのバランスをとって判断する、と理解しています。

 

アメリカで使っていたネオマイシン(=非吸収とわかっている 注5)は、日本にはないですよね。

 

ポリミキシンBを使う施設もあるようですが私自身は使ったことがありません。

 

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大崎往夫先生からの耳学問

(元:大阪赤十字病院消化器内科統括部長、現:明和病院特任院長.
大阪赤十字病院研修医の時からの私の生涯のメンター。
今回In the Clinic HCVでも専門監修していただきました)

 

肝性脳症も含めて肝硬変の治療薬は日本と海外では大きく異なります.
腹水コントロールのための利尿剤も欧米のガイドラインではフロセミド160mgまで投与となっています.
そんなことをすると日本人ではすぐに腎不全となってしまいます.
日本ではアルダクトン25-50mgとの併用で40mgまでが推奨されており早期にトルバプタンを使うようになっています.
また肝性脳症に関してもご指摘の通りです.
リファキシミンはイタリアで開発されたもので何十年?も前から使われていたものです.
日本では治験をしていなかったため,代替として保険適応ではありませんでしたが,他になかったためカナマイシンが使われており当局も黙認していました.
これも難吸収性でほぼ同等の効果を得られるものと思われますが,リファキシミン(リフキシマ®)が保険収載されたため現在はリフキシマ®となりこれしか使えるものはありません.

ネオマイシンは実験用に供給されているだけです.
ポリミキシンBもカナマイシンと同様です.

 

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当院(聖マリアンナ横浜市西部病院)の超ありがたい病棟薬剤師 
中薗健一さん、勝綾香さんが調べてくれた情報 下記。

 

カナマイシン内服は、保険適応としては感染性腸炎などのみであり、肝性脳症への保険適応はなし。

ただし、リファキシミンが肝性脳症の治療薬として2016年に承認されるまでは、肝性脳症予防/治療に対する非吸収性内服抗菌薬で保険適応の薬剤がそもそも日本に存在しなかったため、カナマイシン内服が適応外使用として長年使用されてきた。

 

カナマイシン内服の、吸収率、聴覚障害(特に透析・CKD症例)に関しては以下。

文献5より抜粋)

カナマイシン内服の透析患者への投与方法:内服は減量の必要はない(経口ではほとんど吸収されない)が、腸管の炎症が強いと吸収される。その場合、透析患者では排泄が遅延しているため長期投与する場合には蓄積して聴覚障害を引き起こす可能性があるので要注意。

吸収:健常者の小腸粘膜から約1%と無視できる量しか吸収されないが、小腸に炎症があり潰瘍や粘膜が浸食された場合には顕著に吸収される。

(抜粋終了)

 

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また、このブログを載せさせていただいているJHN (Japan Hospitalist Network)が刊行しているHospitalistにも、常に疑問に答えてくれる記載が載っています(文献6

 

総合内科医、カバー範囲が広すぎるからこそ「信頼できる専門家からの耳学問(+もと記載の確認)」を「確実なシンプルな型」として生涯学習してゆければと思います。

私も勉強になりました。

 

文献

5.  透析患者への投薬ガイドブック 慢性腎臓病(CKD)の薬物治療改定3版 じほう pp.796-797

6. 宮垣亜紀 肝硬変の合併症②:肝性脳症と栄養マネジメント.Hospitalist 2018 vol.6 No.3 pp705-715. 

 

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注5 さらに追記:

今回調べなおしたところ、私がレジデンシーをしていたとき(2006-9)の1st choiceであったNeomycin内服は、米国でももはやfirst lineでなくなっているようですね。リファキシミンが米国でも1st choice( 文献7

 

文献

7. UptoDate. Hepatic encephalopathy in adults: Treatment, this topic last updated: Aug 17, 2017.

 

 

 

HCV感染症症例の外来マネジメントの型:In the Clinicシリーズ

HCV感染症例外来マネジメントの総合内科医として認識しておくべき型

1.禁酒!!! (文献1)

2.ワクチンの検討 (注1)

HCV感染しているが、HBV陰性⇒HBVワクチン (文献1、4)

肝硬変症例⇒肺炎球菌ワクチン(文献1、4)

肝硬変症例⇒年1回のインフルエンザワクチンの適応 (文献1、4)

3.肝硬変症例では、上部消化管内視鏡による食道静脈瘤スクリーニング (文献1)

4.肝硬変症例は3~6カ月ごとの画像評価(HCCスクリーニング)必要 (文献1、5、 注3)

5.SVR達することにより、肝臓の線維化は改善するが、すべての症例でそうなるわけではない。 同じく、肝発癌のリスクも低下するがゼロにはならない(注2)ことを知っておき、患者に もHCCスクリーニング継続の重要性を説明!! (文献2、3)

 

SVR: Sustained virological response 持続したウイルス学的持続陰性化

 

注1:米国では、慢性肝疾患⇒HAVワクチンの適応(文献1)となっているが、日本ではHAVワクチンは接種推奨とはなっていない。

 

注2:SVR 後も肝発癌リスクは完全には消失せず、SVR 後の 5 年・10 年の発癌率は、それぞれ 2.3~8.8%、3.1~11.1%と報告されている (文献3)

 

注3:肝硬変の画像評価のインターバルはは発癌のリスクによって考慮される。超ハイリスク(ウイルス性肝硬変,高齢,男性,AFP基準値以上)では3ヶ月に一度,ハイリスクでは6ヶ月に一度,が推奨されている(文献5)

 

文献

1.In the Clinic, Hepatitis C Virus. Ann Intern Med. 2016;165(5):ITC33-ITC48.

2.ITC HCV 日本語版:ACP本部WPに掲載中!!!               http://annals.org/aim/fullarticle/2679145/hepatitis-c-virus-japanese-version

3. C 型肝炎治療ガイドライン 第6.1版 https://www.jsh.or.jp/files/uploads/HCV_GL_ver6.1_Mar26__2.pdf

4・http://www.kameda.com/pr/health/index.html 予防医学の薦め 亀田総合病院(八重樫先生)Web

5.肝臓学会肝癌診療ガイドライン2017,サーベイランス・診断アルゴリズム

 

 

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 In the Clinic・5分間ティーチングWS シリーズの続きです。

私がいたシアトルの病院(Virginia Mason Medical Center)では、GIM clinic (総合内科外来)がありました。たとえば高血圧、糖尿病、HCV感染の患者さんは消化器内科にも6ヶ月に1回受診しますがそれ以外はGIM clinicで外来でフォローされていました。Box内1,2および高血圧、糖尿病はGIM clinicの管轄、Box内3,4,5のみが消化器内科外来の管轄という感じでした。

 

医療制度は地域によって異なり、何が一番いいかは私にはわかりません。(米国の上記の二重外来フォローはredundantな気もしていました)

 

ただ、上記Box内1~5のマネジメントがすっきりと頭に入っていることと(=レジデントに言語化してトレーニングされること)、その施設の医者皆に共有されていることはトレーニングとしては素晴らしいなと思いました。良いところは、まねしましょう。

 

総合内科医として知っておくべき、HCVのスクリーニング・治療の型:In the Clinic シリーズ

総合内科医として知っておくべき、HCVのスクリーニング・治療の型:

IFN中心の旧来の治療では、SVR(注1)達成率は半分以下だったが、

新規抗ウイルス薬の開発により、SVR達成率は95%以上に(文献1、注3)

(しかも、内服薬×8~12週間のみで!!(文献1、注3))

∴ HCV症例を認識することが重要.

肝炎検査を受けたことのない患者さんを診たら、HCV検査を勧めること

リスクファクター

血液への曝露歴(注射針使いまわし注2、輸血歴など)、男性同性愛者など 

日本では、リスクファクターに関わらず、全国民が一度は肝炎ウイルス検査を受けることを勧めている(文献2、3)

HCV抗体スクリーニング⇒抗HCV抗体陽性なら、HCV-RNA測定(PCR消化器内科コンサルト (文献1)

 

注1 SVR: Sustained virological response 持続したウイルス学的持続陰性化 

注2 注射針使いまわしは、米国で問題になっている注射薬物乱用(ヘロイン)のみではなく、日本で以前に行われていた予防注射針の使いまわしも含まれる.ゆえに日本ではリスクファクターで選別するのではなく、全国民が一度は肝炎ウイルス検査を受けることを勧めている。

注3:In the ClinicのArticleの出版時点では、SVR達成率90%以上、治療期間8~24週と記載されていたが、新たなレジメも追加され、SVR達成率は95%以上、治療期間レジメは8~12週間となっている (専門監修大崎往夫先生よりコメント2018年5月現在)

 

 

文献

1.In the Clinic Hepatitis C Virus. Ann Intern Med. 2016;165(5):ITC33-ITC48.

2.ITC HCV 日本語版:Annals of Internal MedicineWPに日本語版掲載中!!!               http://annals.org/aim/fullarticle/2679145/hepatitis-c-virus-japanese-version

3.厚生労働省Webpage、肝炎ウイルス検査:

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou09/hepatitis_kensa.html

 

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In the Clinic翻訳プロジェクト→ ACP日本支部年次総会で行った5分間ティーチングWSの時に作成した型シリーズです。

HCVに対する抗ウイルス薬を、私自身が処方する機会は全くありませんが、「この人はHCVを検査したことがあるかな」と気付いてあげられることは、誰かの人生を変えてあげうることなので、知っていなければならない知識だと思います。

 

妊娠出産したことのある女性、胃カメラ・大腸ファイバーなど検査前は、感染症スクリーニングを受ける機会になりますが、それらがないままの人もいると思います。

今回の覚えないといけないことは下記のみです。

HCV抗体検査を受けたことのない人には検査を。

 

 

 

 

 

問診の型『SIQORAAAPT』

最近、基本に帰ってHistory takingを教える場面がありました。

うちの若手への共有ついでに、

私が一生ものだと思って使っている『問診の型:SIQOR AAA PT』を書きます。

 

 

病歴聴取 SIQOR AAA PT

S : Site, 場所

I : Intensity, 痛みの強さ 10段階のpain scale

Q : Quality, 痛みの性状

O : Onset

  私はここに 間欠的な症状の時はFODを追加して使っています。

        F : Frequency , O : Onset , D : Duration 

R : Radiation, 放散痛

A : Aggravating factors, 増悪因子

A : Alleviating factors, 緩解因子

A : Associated symptoms, 随伴症状 

P : Previous similar episodes, 以前の類似エピソード

T : Treatment at that time ,その時の 治療

 

胸痛のOPQRSTや、問診の「型」はいろいろあると思います。

 

別にどれを使うのがいいというこだわりは私は全くありませんし、今使っている型が身についているなら、それを続けて使うので良いと思います。

 

ただ、私自身が卒後9年目にUSMLE Step2CKを受けた時に「あらゆる症状に最も時短に対応できるためには一つの型に絞った方がいい」と痛感しました。

 

でないと必ず何か抜けますし、何よりスピードが追いつきません(=平たく言うと、Step2CKの時間内に抜けなく問診・カルテ記載が終わりませんでした)。

 

それに主訴は何十種類もあります。「それぞれの型」を、記憶力の弱い私は絶対に覚えられません。

 

その時に出会ったのが上記です。私は今も上記を使っています。米国内科レジデンシーの限界の仕事量を要求される病棟月・夜勤月・ICU月も、上記が私を助けてくれました。

 

例えば前に書いた頭痛・Red flag signであれば、SIQORAAAPTの中の

Associated symptomsのところで「熱出てないですか、物が二重に見えたり見えにくかったりしないですか、吐気は?吐いてないですか?眼はいたくないですよね?」を聞くことを思いつけると思います。

 

頭痛以外にどう使うかですか?  

それはうちに合流してもらえればシェアします(笑) 

 

※SIQOR AAA PTは、

sicker AAA patient (より重症な腹部大動脈瘤の患者)のスペルを語呂合わせ用にもじったものです。

 

脳幹の4D(~6D)、Wallenberg 症候群

脳幹症状の4D(5D、6D)は?

 

Dysphagia 嚥下障害

Dysarthria 構音障害

Diplopia 複視

Dysmetria 測定異常 =Finger to nose, Heel to shinなどの小脳症状

 

Dizziness =Vertigoも含めることも。

Drop attack = syncopeも含めることも。

 

 

 

 

前回書いた片頭痛の中に「片頭痛で脳幹症状を伴うかどうか」という項目がありました。日本では片麻痺や脳幹症状を伴う片頭痛は遭遇頻度はかなり低いと思われます(少なくとも私は日本で診たことがありません。シアトルで片麻痺を伴う片頭痛症例は数例対応しました)。

 

片頭痛の脳幹症状はMKSAP17(Neurology Question#17)によると下記です。

vertigo, ataxia, dysarthria, diplopia, tinnitus, hyperacusis, or alteration in consciousness

 

「脳幹症状の有無」は、片頭痛症例のみならず、意識消失発作や、意識レベル低下症例、脳幹梗塞疑いのアセスメントに、頻用します。

 

それぞれの疾患ごとに別々の覚え方をするのではなく、上記4D(5D、6D)で「型」にしてしまうことで汎用性が増します(=記憶するものが少なくすみ、他の思考に頭が使えるようになります)。

 

私は4D,5D,6Dどれにするかのこだわりは全くありませんが、「型」にしてアセスメントしてゆくことは必須と思います。脳幹のDは頻用します。

 

ぜひ覚えて使ってください。

 

下記Wallenberg症候群は覚えなくていいですが、わたしが100回覚えても100回忘れるので(かつ脳幹梗塞の中で遭遇頻度が高いので※1)備忘録として書いておきます。

Wallenberg syndrome (Lateral medullary syndrome/infarction 延髄外側症候群/梗塞) (MKSAP17 Neurology Q#71)

  • Dysarthria: 嚥下障害
  • Dysphagia: 構音障害
  • Vertigo: 真性めまい
  • Ataxia: 失調(同側)
  • Loss of pain and temperature sensation ipsilaterally in the face: 同側顔面の温痛覚↓
  • Loss of pain and temperature sensation contralaterall in body: 対側頚部以下、体幹、上下肢の温痛覚↓ (これだけ対側
  • Horner syndrome Horner症候群(同側)

 

※1:私の「遭遇頻度多い」の経験則・感覚があっているか調べたところ、

Lateral medullary infarction — Lateral medullary infarction (Wallenberg syndrome) is the most common and important syndrome related to intracranial vertebral artery occlusion (UptoDate Posterior circulation cerebrovascular syndromes, This topic last updated: Jun 02, 2017.より)と記載されていました。 



片頭痛migraineのゲシュタルト


● 片頭痛の症状のゲシュタルトは? (文献1、2、3)
POUNDで覚える
 P: pulsatile 脈打つような頭痛
 O: one day duration 未治療だと約1日(4~72時間)続く頭痛
 U: Unilateral location片側性の頭痛
 N: Nausea or vomiting 悪心・嘔吐
 D: Disabling intensity 日常生活に支障をきたすほど痛い  
+ 前兆(aura:キラキラしたもの(閃輝暗点)が見える) 

 

● 片頭痛の発作時治療は?(文献1、2、3)
大きく5種類と覚える
1、 アセトアミノフェン
 2、NSAID
 3、トリプタン 禁忌があることを知っておく!! (注1)
 4、エルゴタミン 禁忌があることを知っておく!!(注2)
 5、制吐剤 

トリプタンの禁忌は? (文献1,2)
血管疾患(虚血性血管疾患、攣縮性の血管疾患とも。確定、疑い含む)
 コントロール不良の高血圧
片麻痺片頭痛(発作時に麻痺が出現する片頭痛
 脳底型片頭痛脳幹症状(※別稿参照)のAura(前兆)が出現する片頭痛

 

注1: 細かいことは覚えなくていいです.投与する前には必ず調べてください!!
軽度~中等度の片頭痛発作:アセトアミノフェンNSAIDs±制吐剤
重度の片頭痛発作:トリプタンor エルゴタミン
日本では5種類のトリプタン製剤が使用可能:
(1)スマトリプタン(商品名:イミグランなど)ソマトリプタンのみ点鼻剤と注射剤もあり
(2)ゾルミトリプタン(商品名:ゾーミック®など)
(3)エレトリプタン(商品名:レルパックス®
(4)リザトリプタン(商品名:マクサルト®
(5)ナラトリプタン(商品名:アマージ®)
注2:エルゴタミンも、冠動脈疾患のある(疑われる)症例では禁忌 (文献1)

 

文献
1 In the Clinic, Migraine. Ann Intern Med. 2017;166(7): ITC49-ITC64.
2 日本頭痛学会慢性頭痛の診療ガイドライン2013
3 In the Clinic, Migraineの日本語版が現在監修過程です。 2018末-2019前半にUpload予定!!  

 

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前回「頭痛のRed flag sign」を書きました。

救急外来や一般外来での「頭痛」の主訴は、こちらのストレスが上がります。

 

不必要な頭部画像乱用を避けつつ、重篤な見逃しを最小限にするには

1.危険なものをrule out する(=Red Flagの活用)と、

2.「migraine」(または「tension」または「cluster」)であるとrule inする

の二本柱でのマネジメントが必要と思っています。

(めまいと似ていますよね)

 

そういう意味で今回の「migraineのゲシュタルト」を型として使ってください。

米国は、片頭痛の頻度が日本に比べて圧倒的に多かった気がします。

シアトルの病院で、

もともと片頭痛持ちの人が」

「また片頭痛の発作と思われる頭痛で救急外来or 内科外来(GIM clinic)を受診した時に」

上記のPOUNDを確認しつつ

Red flagがないことを確認し(かつdoccumentationをして)」

神経所見をきちんととり(かつdocuumentationをして)」

トリプタン製剤の禁忌がないことを確認し」

トリプタン製剤を投与していました。GIM clinicにtemplateがありました。

  

(日本では)片頭痛発作は遭遇頻度が比較的少ないからこそ、抜けがないように上記を「型」として対応してゆければと思います。

 

しつこいですが、このブログは「頭の整理をするための、極めて簡略化したエッセンス」です。患者さんのマネジメントには、上記文献1,2,3などを必ず参照してください。In the Clinic_Migraine_ 日本語版にも、日本の投与量を追記してあり非常に実用的です(今日、原稿をチェックしていました)。公開を、乞うご期待。