電解質異常の原因・鑑別の理解のためには何か成書を一度は読んでください(簡潔かつ必要十分という意味ではPocket Medicineが私はおすすめです)
その上で、実務を回す上で記憶しないと回らない型(=赤字青字)だけを、下記に書きます。
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高K, 低KのEKG変化
高K:借りテント長く暮らす北京(ペキン)
低K:借りなきゃ夕立ストームだ
高K → 借りテント(テント状T波:tentorial T wave、触ると「チクチクしそう」
「痛そう」なT波と覚える)
→ 長く暮らす(QRS延長、widening QRS)
→ ペキン(P波消失、disappearance of P wave)
かつ、この順番に出現することが多い。
低K → 借りなきゃ (カリウムが低いと)
→ 夕立 (U波出現)
→ ストーム (ST低下)
上記の「ゴロ」がなくても覚えられる人はぜひそのまま覚えてください。
私は(臨床業務上の必要を感じるにもかかわらず)4回覚えて4回忘れたあたりからゴロにしようと思いました。
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高K血症状の緊急マネジメント :BCG Dial K bolus(北野作成ゴロ)
B:Bicarbonte (メイロン®) ± beta stiumulant (ベネトリン®吸入)
C:Calcium (カルチコール®)
G:GI therapy
Dial:Dialysis, Diuretics
K:Kayexelate (カリメート®)
Bolus: Fluid bolus (生理食塩水など)
同じく棒暗記できてその記憶が定着する人はゴロを覚える必要はとくにないです。ですが、高K(例K 7.1)で目の前でVT short runを繰り返す症例を対応するような、こちらのカテコラミンが全開の状況では、上記は「知っていても抜けうる」ことを私自身は身をもって知っています。
また、「型」にすることで他の思考(どうして高Kになったのか、バスキャス入れてCE部に電話しなければ、等)に頭のCPUを使うことができますし、施設内でも方針を共有することができます。
理解を助けるために以下:
●カルチコール(カルシウム製剤)は、膜電位を安定化して不整脈を予防するため最初に投与する。
●下線の治療のみが、体外にKを排泄する治療。その他は細胞内にKを押し込むだけ。
●ベネトリン吸入は、重症の場合に使用する。喘息などで使用する約8倍量になる(例:10-20mgを4mlの生理食塩水などで希釈して10分で吸入)。頻脈注意。当院(聖マリアンナ西部)ではほとんど使っていない。VMMCでもほとんど使っていなかった。
●GI療法(Glucose insulin 療法)の処方例:
例1)インスリン10単位を10%ブドウ糖500mlに混注して1時間で投与(時間かかる)
例2)インスリン5単位+50%ブドウ糖(20ml/バイアルx3本)を静注(早い)
一般論としては インスリン1単位:ブドウ糖 5~10グラムが目安。GI療法後は血糖を必ずフォローすること(∵低血糖のリスク、DM症例なら高血糖のリスク)
●カリメートは、イレウスなど腸蠕動が病的に低下している状況では投与しない。
●メイロンを末梢静脈ルートから投与するなら、確実な太いルートから投与すること(∵アルカリ性であり組織障害性が強いので)
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低Kの補正の型
・低Mgチェック→低Mgを先に補正
・K補正(投与)は、消化管が使えるなら消化管を使う。
・K10mEq投与:血清K0.1mEq上昇が目安(下記必ず読むこと)
・急速な点滴K補正は、VT/Vfibのリスクあり、濃度・速度 慎重に。必ず点滴ポンプ使用。
・補正以外の選択肢も知っておく(K保持性利尿薬)
理解を助けるために以下:
・「血清Mgが低いと、腎臓でのK分泌↑で補正したKが保持されないとされる(*1*2ので、低Mgかつ低Kの時はMg補充を先におこわないと、投与されたKが保持されない」が原則(もちろん、低Kが重篤なら平行して補正)。
・If you can use the gut, use the gut. (低K補正でも栄養でも、腸管を使えるなら腸管を使う、が原則)
・消化管からの投与だけで不十分な場合(ほとんどそうだが)、点滴での補正も併用。
・Kの補正の時に アスパラカリウム★グラムではなく、常にmEqで把握/考えること。
・目安が「Kの10mEq補正投与で血清Kが0.1mEq上がる」。だが、この通りに行くことはない。だが上記の目安を知っていることで「入院時血清K1.9でしたので、本日K 40mEq投与で補正しています。明日フォローします」では「全く足りなさそう」なことが感触として身につくと思う。(もちろん、Kを4.0にあげるために「4.0-1.9=2.1mEq→本日210mEq投与します」とは絶対にしないように!!!)。時間を味方につける。例えばK1.9なら、60mEq投与してフォロー、どれくらい上昇したかをみて、次の投与量を決める。
・腎機能障害があれば、予想された以上にK上昇する。
・当院のセットオーダーは、慎重目に下記にしています。
中心静脈ルート:KCL注 20mEqキット 1キット=20ml
生理食塩水 80ml
1時間以上かけて投与(これで20mEq/hrの速度になります)
末梢静脈ルート:KCL注 20mEqキット 1キット=20ml
生理食塩水 500ml
2時間以上かけて投与(これで10mEq/hrの速度になります)
・UptoDateによると下記でした*3。
濃度: (いずれも、可能ならブドウ糖ベースでなくて生理食塩水が望ましい。∵Glucose→細胞内へのKの移動→一過性に低K悪化の可能性があるから)
1000mlバッグに入れるなら、K60mEqまで。
100-200mlバックで末梢ルートから投与なら、K10mEqまで。
100mlバッグで中心静脈ルートから投与なら、K 40mEqまで。
速度:
K 10-20mEq/hr以下がよいが、低Kが重篤(life threatening)なときは、40mEq/hrで投与される場合もあり(リスクベネフィットを考慮して方針決定すること)
上記の一般論を組み合わせて「思考=患者さんにベストな方法」を症例ごとに構築してゆくことになります。
参考文献:
Pocket Medicine 6th edition 4-10~11
大阪赤十字病院でのteaching
VMMCの時のteaching
UptoDate Treatment and prevention of hyperkalemia in adults. referenced on 2019/5/20.