サンプル症例:
70歳男性
サンプル1)最近、外に出かけることなく、受け答えも鈍くなってきた。認知症なのではないかと心配になった家族とともに受診(内科外来パターン)
サンプル2)この3週間ほど、受け答えが鈍くなってきた。言動もおかしい。お手洗い(排尿)が間に合わずに失禁してしまったことも。本日、家族が帰宅してみると朦朧としており慌てて救急要請(うちの救急外来パターン)
認知症疑い症例は、鑑別が多岐でいつも頭を悩ませます。だからこそ、Treatable dementiaの型を私は使うようにしています。
Treatable dementia
前回のブログで、胃全摘後(部分切除後でも)は、ビタミンB12欠乏注意を書かせていただきました。
Treatable dementiaの中にビタミンB12欠乏が出てくることで、「型」どうしが重なり合い有機的につながってゆく感触が伝えられればうれしいです。
上記のTreatable dementiaは、私がシアトルで上級医からベッドサイドで聞き、さらに(私の大好きなresourceの一つである)In the Clinicの非常にクリアカット・シンプルな記事で裏付けを取り使用してきたものです。
さらにうれしい驚きとして、尊敬する山中克郎先生の本 UCSFに学ぶできる内科医への近道*2にもほぼ全く同じ記載を帰国後に見つけ、とても励まされました。
上記の型を常に使うことで
「採血、何を出そうかなあ~」
「頭のCT取った方がいいよなあ~」から脱却して、
病歴・身体所見・内服薬把握は必須 (次回DEATH SHAFTを書きます)
その上で、
血算・生化学は 大球性貧血や肝性脳症、腎不全、電解質異常除外のために必要です。
梅毒検査(RPR)、HIV抗体検査は、神経梅毒およびHIV脳症除外目的で必要です。
TSH, ビタミンB12は必要です。
頭部CTは、正常圧水頭症と 慢性硬膜下血腫除外目的で撮影します。。。
と、思考を構築してゆけると思います。
また、私が頻用している小さな「型」として
Wet, Wacky, Wobbly
Wet: (子供がおもらしをする英語から)尿失禁
Wacky:(子供が使う’頭おかしい’的英語から)意識障害
Wobbly:(歩くのがふらふらする英語から)歩行障害
があります。
これを使うことによって、頭部CTで「脳室が大きそうに見えるけど、正常圧水頭症を疑うべきか自信がないなあ」の時に、「頭部CTで、脳溝に比し脳室が拡大していそうに見えます。かつ意識障害、歩行障害、尿失禁も認めるため、正常圧水頭症の可能性も含めて神経内科(or脳外科)に相談します」と思考を構築することができます。
他には、パーキンソンの「型」として私は下記をよく使っています。
パーキンソン病の症状 ’TRAP'
Tremor
Rigidity
Akinesis
Postual instability
型が無限に出てくる気がするかもしれませんが、総合内科医~内科救急医として働く上で、持ち札=型=5分間ティーチングが多いほど、自分の臨床を助けてくれることを実感しています。
*1:Dementia, Annals of Internal Medicine, In the Clinic, August 2014、
Dementia | Annals of Internal Medicine | American College of Physicians
*2: