Dr.Yukaの5分間ティーチングブログ

聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 救命救急センター 北野夕佳の5分間ティーチング連載ブログです。日々の臨床で必要な知識を「型」として蓄積するブログです。

Correct coagulopathyの引き出し


前回、脳出血症例を書きました。

その中に「correct coagulopathy(出血傾向があれば補正)」があったと思います。

今回は、その引き出しの中に入れるべき「型」=「5分間ティーチング」を書きます。

Correct coagulopathyの引き出し:

  • 常に内服薬の確認:抗凝固薬、抗血小板薬の有無
  • 採血ではPT, APTTの延長、Pltの減少がないか
  • Warfarin内服中(かつINR延長)なら⇒ FFP and/or ビタミンK
  • 血小板減少なら ⇒血小板輸血  

 

一段目の引き出しには、むしろこれくらい単純な内容の方がすっきりすると思います。

このベースを把握したうえで、より詳細な「型」を蓄積してゆく方がいいと思います。

  

supratherapeutic INR(ワルファリン過剰、INR過延長)への対応の引き出し *1

INR

出血の有無

     

治療域~5.0

なし

ワルファリン減量

or ワルファリン1回休薬して減量して再開

or ほぼ治療域ならそのままのワルファリン量で継続

5.0~9.0

なし

ワルファリン1、2回休薬して、減量して再開

Or 1回休薬して、ビタミンKを1~2.5㎎

9.0~

なし

ワルファリン休薬してビタミンKを2.5~5mg内服

INRフォロー、必要ならビタミンK追加投与。

INRが治療域になってから、減量したワルファリンを再開

 

どの値でも

重篤な出血

ワルファリン中止、ビタミンK 10㎎ゆっくりIV

FFPかPCC(プロトロンビン複合体製剤)投与

 

大まかに、

待てるINR過延長⇒ ワルファリンホールド ± ビタミンK製剤内服

待てないINR過延長⇒ ワルファリンホールド+ビタミンK製剤ゆっくりIV + FFP 

で私は頭を整理しています。

 

 

 

 

 

上記のSupratherapeutic INRの対応表(UptoDateにいつでも載っています)は、私は絶対に覚えられません(笑)。なので、うち(聖マリアンナ横浜市西部病院)ではミネート加工して救急外来マニュアルファイルに入れました。表を覚えるよりもよっぽど大事なことは、焦った時に、ビタミンK製剤が、「K1じゃないとだめなんだっけ? K2でもいいんだっけ??」「K2にした時の投与量はどうするんだっけ??」とならないように事前に調べておくことだと私は思っています。医療は「医学知識」だけでは不十分で「実務」ですから。 

 

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うちの非常に優秀な病棟薬剤師さんと一緒に、確認してオーダーセットに入れておきました。

 

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また、ビタミンK製剤の経静脈投与はアナフィラキシーのリスクがあることは言われています。

「どうしてIVにしたんだ?アナフィラキシーのリスクがあるじゃないか?!」

「どうして内服にしたの?いつまでたってもINR補正されないじゃない?!」

という水掛け論にならないように、型としては以下だと思っています。

 

ビタミンK製剤(ワルファリンリバース時)の引き出し *2

  • ビタミンK製剤 経静脈投与はアナフィラキシーのリスクがある(ビタミンK内服では、ほぼなし。納豆食べてアナフィラキシーは聞かないですよね
  • ビタミンK製剤経静脈投与では、INRは数時間以内にリバースされる。
  • ビタミンK製剤内服投与では、INRは1-2日以内にリバースされる。24時間の時点ではビタミンK内服投与・経静脈投与でINR補正はほぼ同等 *3
  • あとは上記の一般論を構築して臨床判断。 

 

ブログを書いてみて、「理解するためには字数がいるんだな」と私自身新たな気づきがあります。「理解するために」はこれくらいの字数が要りますが、「覚えること」は箱の中だけです。

 

シンプルに、一般論=型を、引き続き書いていこうと思います。

 

 

 

 

*1:UptoDate_Management of warfarin-associated bleeding or supratherapeutic INR_This topic last updated: Oct 18, 2017.

*2:UptoDate_Management of warfarin-associated bleeding or supratherapeutic INR_This topic last updated: Oct 18, 2017

*3:内科ポケットレファランス5-10