Dr.Yukaの5分間ティーチングブログ

聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 救命救急センター 北野夕佳の5分間ティーチング連載ブログです。日々の臨床で必要な知識を「型」として蓄積するブログです。

尿から 黄色ブドウ球菌陽性の時の型

 

 

サンプル症例: 50歳男性、悪寒、微熱、全身倦怠感で内科外来受診。 各種精査しCVA叩打痛は微妙にあり。尿中WBC 30-49/HPFであり、腎盂腎炎の診断で入院、抗生剤セフォチアム開始。 

WBC, CRPなどは改善傾向。尿培養から MSSA陽性

 

アセスメント/プランは? 考えるべきことは?

 

一般論:
尿培養から 黄色ブドウ球菌(MSSA or MRSA) が検出されれば、尿路感染症ではなく、菌血症からの膿尿・細菌尿ではないかと考えること。

 

 

そのためには、尿路感染の一般的な起因菌を把握していなければならない。(妙な菌が出ていると気付けなければならない。)

 

一般論: 尿路感染の頻度の高い起因菌は?

通常の尿路感染なら: 

E.coli, Enterococcus、Klebsiella, Staph saprophyticus,

カテーテル留置症例なら: 

上記ぷらす Pseudomonas, Proteus mirabilis など。 黄色ブドウ球菌カテーテル留置症例ならありうる。

 

MSSAMRSAもあり)の何らかの菌血症(IE, 硬膜外膿瘍、化膿性脊椎炎、Psoas abscessなど)を、尿中WBC陽性、尿培・血培から MSSAを根拠に腎盂腎炎としてpartial treatmentされて悪化してから最終診断される症例は散見され、最大限回避すべきと考える。 

 

尿培養・血液培養からMSSA陽性なら、まずは必ず血液培養フォロー、持続的菌血症なら IEなどの可能性がより高くなる。IEなどの感染源が特定できない場合には(例:慢性尿道カテーテル留置症例でMSSA尿路感染でもあり得る状況で、MSSAの尿路感染症と判断=commitする としても)抗生剤終了後必ず血液培養再検を。

 

知っていることで運命を変えてあげられる患者さんがいます。

自分が知っているだけでなく、周りにも知識の共有を。  

 

参考資料: 

Hospitalist 2015;vol.3: no.1 pp.258-266 北野の5分間ティーチング連載 腎盂腎炎バージョンで、引用文献の、記載部位を見つけたい方は参照してください。