サンプル症例: 50歳男性、悪寒、微熱、全身倦怠感で内科外来受診。 各種精査しCVA叩打痛は微妙にあり。尿中WBC 30-49/HPFであり、腎盂腎炎の診断で入院、抗生剤セフォチアム開始。
アセスメント/プランは? 考えるべきことは?
一般論:
尿培養から 黄色ブドウ球菌(MSSA or MRSA) が検出されれば、尿路感染症ではなく、菌血症からの膿尿・細菌尿ではないかと考えること。
そのためには、尿路感染の一般的な起因菌を把握していなければならない。(妙な菌が出ていると気付けなければならない。)
一般論: 尿路感染の頻度の高い起因菌は?
通常の尿路感染なら:
E.coli, Enterococcus、Klebsiella, Staph saprophyticus,
カテーテル留置症例なら:
上記ぷらす Pseudomonas, Proteus mirabilis など。 黄色ブドウ球菌もカテーテル留置症例ならありうる。
MSSA(MRSAもあり)の何らかの菌血症(IE, 硬膜外膿瘍、化膿性脊椎炎、Psoas abscessなど)を、尿中WBC陽性、尿培・血培から MSSAを根拠に腎盂腎炎としてpartial treatmentされて悪化してから最終診断される症例は散見され、最大限回避すべきと考える。
尿培養・血液培養からMSSA陽性なら、まずは必ず血液培養フォロー、持続的菌血症なら IEなどの可能性がより高くなる。IEなどの感染源が特定できない場合には(例:慢性尿道カテーテル留置症例でMSSA尿路感染でもあり得る状況で、MSSAの尿路感染症と判断=commitする としても)抗生剤終了後必ず血液培養再検を。
知っていることで運命を変えてあげられる患者さんがいます。
自分が知っているだけでなく、周りにも知識の共有を。
参考資料:
Hospitalist 2015;vol.3: no.1 pp.258-266 北野の5分間ティーチング連載 腎盂腎炎バージョンで、引用文献の、記載部位を見つけたい方は参照してください。