Dr.Yukaの5分間ティーチングブログ

聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 救命救急センター 北野夕佳の5分間ティーチング連載ブログです。日々の臨床で必要な知識を「型」として蓄積するブログです。

消化管出血のマネージメントの型

消化管出血マネジメント GI bleeder: シアトルの時の施設共通の型 
 
  • Two large bore PIV(太い=18G以上の静脈路を2本以上確保)))
  • Fluid bolus if signs/symptoms of hypovolemia(hypovoemia疑うなら、補液ボーラス)
  • Serial Hct q2-6hr(Hctを経時的フォロー)
  • Type and cross, order PRBC(血液型・クロスとRCCのオーダー)
  • Admit to telemonitor (モニター付けて入院)
  • Vital q1-3hr(バイタルは頻回にフォロー)
  • Give PPI to all GIB until proven not to be from UGIB(上部消化管出血の否定までは、全例PPIを投与)
  • Correct coagulopathy(凝固異常があれば補正する)
  • Call GI(消化器内科call→GF/Angio/手術の選択を依頼)
  • NPO(絶飲食。経口投薬は基本的にホールド(ただし必須薬の場合、例外はあり))
  • 直腸診

 

理解のために、以下書きますが、

覚えないといけないことは赤字青字のみ

 

★下血だから下部消化管出血だよね?

UGIBでも出血量が多いと、消化されずにそのまま赤色になることに注意。

 

★鑑別は?

下部消化管出血

  • 大腸憩室出血(最多)
  • 痔核
  • 直腸潰瘍
  • 大腸癌
  • 虚血性腸炎
  • 血管異形成
  • IBD:下血と言うより血便だが) 

 

 

上部消化管出血

  • 胃十・二指腸潰瘍
  • 胃・食道静脈瘤
  • Deulafoy潰瘍
  • マロリーワイス
  • 胃・食道癌

 

その他

  • 異物(魚骨、薬莢、義歯)
  • AAAなどによる大血管への穿通(aorto-enteric fistula)
  • まさかの大量鼻出血の嚥下
  • まさかの実は喀血
★バイタルサインで注意するところは? 

 →Shock index = HR/SBP 
Shock index>1.0つまり HR>BPは、出血量>1L以上と言われている。「バイタルの逆転」とも言い、一般的に出血性以外のショックであっても、(sBP >90で保たれていても)血圧低下の前兆として認知すべき状態。つまり、一般的に血圧が低下する(ショックになる)前に、脈拍が増加することが多い 

 →出血性ショックの前兆として、⑴起立性低血圧 ⑵頻脈があることを知っておく 

 

★じゃあ頻脈じゃなかったらショックじゃない? 

 →頻脈になれない患者でないかを必ず確認。βb(βブロッカー)・CCB(Ca拮抗薬)・ジキタリス内服中、PM(ペースメーカー)挿入中、房室ブロックなど徐脈性疾患など 

 

★出血源を特定するために、必要な問診・診察は?上記鑑別診断を思い浮かべば自然に思いつくはず。思いつかなければ下記参照。 
 

 問診:消化性潰瘍の既往、直近のGF/CF歴、検診受診歴、放射線治療歴、腹部手術歴(大血管含む)、嘔吐・吐血・心窩部痛の先行の有無、市販薬含めた鎮痛薬内服歴、体重減少・食思不振、今までの吐血・下血歴、飲酒量 

 

 身体所見:眼瞼結膜の貧血、手掌蒼白、心窩部圧痛、肝硬変の身体所見

 
★提出すべき検査は?
  • CBC(特にHb, MCV, Plt), Coag (PT, APTT), BUN/Cr, LFT, 血液型・クロスマッチ用検体高齢者/coronary risk高ければ心筋逸脱酵素+ECGも) 

 

★採血ではHb 10 g/dlで2週間前の外来時採血と変わりなかった。大して出血してないんだよね?

 →急性のGIBで24時間以内はHb低下しないことあり 
Hbが低下するのは、出血後、3rd spaceから水分が血管内に移動して(=希釈されて)から。
オレンジジュースをコップから3分の1こぼしても、オレンジジュースの濃さは変わらない。元の分量まで水を追加してはじめて薄まる(=Hbが下がる)と考えると理解しやすい。

 

★NGチューブで洗う?

(いれば)消化器内科医と相談。局在診断には有用。鮮血→活動性出血、黒色→最近のGIBだが、GIB除外とはならないこと、食道静脈瘤の可能性があるなら要注意であることは知っておく。 

 

NGチューブでの胃液の色の型 (信号と同じと覚えると覚えやすい  参考文献1)

黒(Coffee ground)→最近の出血
(fresh red blood) →アクティブな出血
(gastric content)→ 胃液だが胆汁は混ざっていない=幽門以遠からの液体は混ざっていない=十二指腸からの出血は否定できない。
(bilious content)→ 胆汁の逆流あり=幽門以遠からの液体が混ざっている=十二指腸も含め上部消化管の現時点の出血なし。

 

注意:「現時点での出血」の評価であることを忘れずに(例えば、胃潰瘍からの活動性出血があったが、すでに自然止血しているという状況も考えられる)

 

RCC 2単位輸血と大量補液でHb 7.0→7.9に上昇。Hb上がってるし順調だよね?思考過程は? 

 RCC2単位輸血=Hb 1.5↑が目安。予想していた、Hb上昇より少ないことから考えることは、①出血が持続している ②大量補液による希釈 を考える。 

 →ワンポイントではなく、時間を味方につける。バイタルとHctを経時的フォロー 

 

★直腸診でのグアヤック(便潜血)の提出は必要? 

則は便の色の肉眼的判断が優先。(しかし、フェロミア便だったり、色が紛らわしいときに判断の助けにはなる。Up to dateでは施行を推奨なので、行っても間違いではない。

 

   

 

 

<参考文献> 

  1. Up to date;Approach to acute upper gastrointestinal bleeding in adults 
  1. Up to date:Approach to acute lower gastrointestinal bleeding in adults 
  1. Pocket medicine 3-3 
  1. Pocket emergency medicine:3-9 
  1. 朝倉内科学、診療エッセンシャルズ 
  1. 臨床指導はこうやる はる書房 6章 明日からできるベッドサイド5分間ティーチング 北野夕佳 p.91-115 

 

 

耳で聞いたら、記憶に残りますからね。うちのティーチング動画上げておきました。

 

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