Dr.Yukaの5分間ティーチングブログ

聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 救命救急センター 北野夕佳の5分間ティーチング連載ブログです。日々の臨床で必要な知識を「型」として蓄積するブログです。

TRALI (Transfusion-related acute lung injury、輸血関連急性肺障害)

数週間前に、他科の患者さんで、血漿交換後に急性に呼吸不全を呈してお手伝いした症例がありました。もともとRoom air→急性呼吸不全となり8Lリザーバーで92%、CXRで両側肺水腫(++)。典型的なTRALIと思われます。私も医者人生で2例目です。頻度が少ない疾患だからこそ「型」で定着させましょう。

TRALI の型:

(Transfusion-related acute lung injury、輸血関連急性肺障害)

  • 概念:輸血中or後の6時間に起こる急性両側性肺水腫/肺障害
  • 輸血中の呼吸不全を見たら、TRALI, TACO, アナフィラキシーを疑う → 心不全の評価、アナフィラキシーの評価、他のARDSの鑑別(※1)
  • 即、輸血中止→ 血液バッグ残しておく(重要!)
  • 治療はARDSに準ずる(※2)。
  • 輸血室or血液センターに連絡して指示に従う(→輸血前/後の血液検体提出を指示されるので、残検体を残しておくよう検査室に連絡する:重要!) 

 

 

※1 のために、ARDSの原疾患の型「ARDSPT」を使います↓↓

※2 ARDSの標準的治療は?も書いてあります。 ↓↓

型同士がつながってくるでしょ?

【ARDSの型_超基本】

http://ykitano5min.hatenablog.com/entry/2019/06/04/150130?_ga=2.237047808.1679875116.1576114528-755407075.1542280505

 

日本赤十字社のWEBにも、ARDSの誘引として評価するべきより広いリストが載っています(出典2)

 ::::::::::::::::::::::::::::

 

上記の型をteachingしたら、うちの超優秀な後期研修医跡部かおり先生が下記をまとめてくれました。

『理解』するためには下記、最後に頭に入れる『型』は上記。皆で成長しましょう。

 

【Transfusion-related acute lung injury (TRALI)】
輸血中もしくは輸血後まもなく起こる急性の呼吸不全。輸血に含まれるドナーの白血球や抗好中球抗体で起こるとされている。症状:輸血中or輸血後急性の呼吸不全、低血圧、発熱、頻脈など診断基準:
  • 輸血中or輸血後6時間以内の急性発症
  • 低酸素血症
  • CXRでの両側肺浸潤影
  • 過負荷や左房圧上昇所見なし
  • 輸血前に ALI/ARDS なし
  • 輸血以外のリスク因子なし
マネジメント:
・輸血中であれば速やかに中止
・酸素投与や人工呼吸器での呼吸サポート
予後/予防:
・TRALI発症の70-80%で人工呼吸器管理が必要
・だいたいは72時間以内に回復
・予防はTRALIを起こした血液製剤のドナーと同じ血液製剤は避ける
TRALIの既往は再発のリスクにはならない
・血液センターに報告し、検体(輸血前後の患者の血清、使用した血液製剤バッグ、有害事象報告書)を送る
 
*輸血合併症であるTACOとの鑑別:
TACOは心不全徴候(JVD,EF低下、高血圧、overvolume)あり、TRALIは低血圧、hypovolume、normal EFで区別
 
アナフィラキシーとの鑑別:
アナフィラキシーはよりアレルギー症状(stridor, wheeze, 消化器症状、皮疹)が出る 
 
出典:
  1. UptoDate Transfusion-related Acute Lung Injury referenced 20191212.
  2. 日本赤十字社>輸血の副作用>非溶血性副作用
    http://www.jrc.or.jp/mr/reaction/non_hemolytic/trali_taco/