Dr.Yukaの5分間ティーチングブログ

聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 救命救急センター 北野夕佳の5分間ティーチング連載ブログです。日々の臨床で必要な知識を「型」として蓄積するブログです。

ARDSの型_超基本 

今日、多施設ジャーナルクラブの後で、ARDS超基本振り返りをしました。

ハコの中だけ、覚えてください。 

担当:北野夕佳、若竹春明、吉田稔 

 

ARDSの診断基準 Berlin定義2012 JAMA2012;307:2526

  • 急激な発症(≦1週間)
  •  両側浸潤影
  • 心不全や輸液過剰ではない 

 

 

重症度分類:(重症度分類を見て把握しなければ、P/Fが指標として重要、と思い出せばいいです。私は数値は覚えられません)


PEEP(もしくはCPAP)が5cmH2O以上で

  • 軽傷 :200mmHg<PaO2/FIO2≦300
  • 中等症:100mmHg<PaO2/FIO2≦200
  • 重症 :PaO2/FIO2≦100

ARDSの治療の大原則

  • Treat underlying etiology (原疾患の治療)
  •  Lung protective ventilation (肺保護換気) 

 

私がVMMCのICUローテーション中にしつこくたたき込まれたのが、この『ARDSの治療は、「原疾患の治療」が大原則!!』です。その上で「肺保護戦略」を。
救急外来到着後、敗血症の血液培養提出/抗菌薬開始が2時間も滞った状態で、CVラインを挿入していたり、人工呼吸器の設定をこまごまいじっていたりすることのないように!!

 

 


原疾患の治療=原疾患を把握  
(ARDSPt ARDSを起こす代表的疾患。北野作成ゴロ)
A:Aspiration 誤嚥
 R:RBC 輸血(TRALI)
 D:Drug 薬剤
 S:Sepsis 敗血症・感染症
 P:Pancreatitis 膵炎
 T:Trauma 外傷 

 

原疾患の治療が大原則だからこそ、「この方のARDSの原因は何なのか」という頭を常に持つこと。

 

Lung protective ventilation:(肺保護換気)
概念:
Volutrauma:過伸展
 Barotrauma:圧損傷
 Atelectrauma:虚脱・開放を繰り返すことの害
 Biotrauma:サイトカイン放出

肺を伸ばしすぎたり(volutarauma)、高い圧をかけすぎたり(barotrauma)、虚脱・開放を繰り返したり(atelectrauma)するとサイトカイン放出・多臓器不全↑。
過伸展・圧損傷として、気胸のリスクも。 

 

 

Lung protective ventilationの実際・原則
  • Low tidal 6-7ml/kg (体重はIBW理想体重を使用)
  •  High PEEP (PEEP/FiO2 ladderのhigh PEEPの方を使う(下表)
  •  P plateau≦ 30cmH2O
  • Permissive hypercarbia pH>7.15なら許容(ただし実際には当院ではpH>7.20を目指している)
  • Permissive hypoxemia SpO2≧90%、PaO2≧60mmHgなら許容。
  •  指標として経肺圧使用が望ましい(当院では使用している)
  •  重症ARDSでは腹臥位16時間/日併用

 ICU管理の基本(また今度、書きます)を徹底的に行うこと(=合併症を起こさずにICU管理を乗り切ること)が、上記と同じくらい重要であることも強調したい。

 

 

Higher PEEP/lower FiO2 (元記載はARDS network 下記)

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ARDS network 

http://www.ardsnet.org/files/ventilator_protocol_2008-07.pdf