Dr.Yukaの5分間ティーチングブログ

聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 救命救急センター 北野夕佳の5分間ティーチング連載ブログです。日々の臨床で必要な知識を「型」として蓄積するブログです。

片頭痛migraineのゲシュタルト


● 片頭痛の症状のゲシュタルトは? (文献1、2、3)
POUNDで覚える
 P: pulsatile 脈打つような頭痛
 O: one day duration 未治療だと約1日(4~72時間)続く頭痛
 U: Unilateral location片側性の頭痛
 N: Nausea or vomiting 悪心・嘔吐
 D: Disabling intensity 日常生活に支障をきたすほど痛い  
+ 前兆(aura:キラキラしたもの(閃輝暗点)が見える) 

 

● 片頭痛の発作時治療は?(文献1、2、3)
大きく5種類と覚える
1、 アセトアミノフェン
 2、NSAID
 3、トリプタン 禁忌があることを知っておく!! (注1)
 4、エルゴタミン 禁忌があることを知っておく!!(注2)
 5、制吐剤 

トリプタンの禁忌は? (文献1,2)
血管疾患(虚血性血管疾患、攣縮性の血管疾患とも。確定、疑い含む)
 コントロール不良の高血圧
片麻痺片頭痛(発作時に麻痺が出現する片頭痛
 脳底型片頭痛脳幹症状(※別稿参照)のAura(前兆)が出現する片頭痛

 

注1: 細かいことは覚えなくていいです.投与する前には必ず調べてください!!
軽度~中等度の片頭痛発作:アセトアミノフェンNSAIDs±制吐剤
重度の片頭痛発作:トリプタンor エルゴタミン
日本では5種類のトリプタン製剤が使用可能:
(1)スマトリプタン(商品名:イミグランなど)ソマトリプタンのみ点鼻剤と注射剤もあり
(2)ゾルミトリプタン(商品名:ゾーミック®など)
(3)エレトリプタン(商品名:レルパックス®
(4)リザトリプタン(商品名:マクサルト®
(5)ナラトリプタン(商品名:アマージ®)
注2:エルゴタミンも、冠動脈疾患のある(疑われる)症例では禁忌 (文献1)

 

文献
1 In the Clinic, Migraine. Ann Intern Med. 2017;166(7): ITC49-ITC64.
2 日本頭痛学会慢性頭痛の診療ガイドライン2013
3 In the Clinic, Migraineの日本語版が現在監修過程です。 2018末-2019前半にUpload予定!!  

 

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前回「頭痛のRed flag sign」を書きました。

救急外来や一般外来での「頭痛」の主訴は、こちらのストレスが上がります。

 

不必要な頭部画像乱用を避けつつ、重篤な見逃しを最小限にするには

1.危険なものをrule out する(=Red Flagの活用)と、

2.「migraine」(または「tension」または「cluster」)であるとrule inする

の二本柱でのマネジメントが必要と思っています。

(めまいと似ていますよね)

 

そういう意味で今回の「migraineのゲシュタルト」を型として使ってください。

米国は、片頭痛の頻度が日本に比べて圧倒的に多かった気がします。

シアトルの病院で、

もともと片頭痛持ちの人が」

「また片頭痛の発作と思われる頭痛で救急外来or 内科外来(GIM clinic)を受診した時に」

上記のPOUNDを確認しつつ

Red flagがないことを確認し(かつdoccumentationをして)」

神経所見をきちんととり(かつdocuumentationをして)」

トリプタン製剤の禁忌がないことを確認し」

トリプタン製剤を投与していました。GIM clinicにtemplateがありました。

  

(日本では)片頭痛発作は遭遇頻度が比較的少ないからこそ、抜けがないように上記を「型」として対応してゆければと思います。

 

しつこいですが、このブログは「頭の整理をするための、極めて簡略化したエッセンス」です。患者さんのマネジメントには、上記文献1,2,3などを必ず参照してください。In the Clinic_Migraine_ 日本語版にも、日本の投与量を追記してあり非常に実用的です(今日、原稿をチェックしていました)。公開を、乞うご期待。