サンプル症例
30代男性が、バイク単独事故で搬送された。JATECにのっとって診療し、全身の擦過傷はあるが、骨折はなかった。
Q:破傷風の予防のために、何を評価すればよいか?
傷があるときには、
①きれいな傷かそうでないか、を診察
②規定の3回/追加接種を含めた、最後の破傷風ワクチン接種歴を聞く。
③破傷風トキソイド・テタノブリンの適応を判断する。
④圧倒的大前提として、傷の開放・洗浄=嫌気環境を作らない
傷を見たときは、常に以下のフローチャートを確認し、破傷風の予防を行う。
Uptodate. Infectious complications of puncture wounds. Literature review current through: Jul 2017. 2017.08.12閲覧。table1を参考に著者作成
きれいと汚いってどう分けるの?と疑問に思ったら、以下を参考にする。
レジデントのための感染症診療マニュアル 第3版 p1393 tab.20-4を参考に、著者作成
- 日本にいる人は、最終破トキ接種は、11-13才→20才代では、10年以上接種されていない可能性が高い*1
- TIG(テタノブリン)を投与するなら、破トキを投与したのと違う部位に筋注(∵中和されてしまうから)*2
- ただし、免疫グロブリンの使用は、トキソイドによる抗体産生の妨げにならない*3
参考:改定第5版のJATECガイドラインには、以下の記載があり、TIGの積極的投与の選択肢があることを示している。従って、上記基準があくまで目安とし、柔軟に対応していただきたい。
JATECガイドラインから引用)しかし軽微なものを含め、様々な創傷で起こるため、破傷風になる可能性が高い創を定義することは困難であり、破傷風トキソイドの接種歴がないか、最終接種から10年以上たっている場合には、TIGを投与すべきとする総説*4もある。(中略)TIGは特定生物由来製剤であるため、投与には説明と同意が必要であることに加え、費用対効果の問題やTIGの使用と破傷風のリスクの比較検討が必須となることからも、現時点ではあまり現実的ではない。
ちなみに、米国では破傷風トキソイドの推奨は成人10年ごとです*5。
私自身、米国にいた時には破傷風トキソイドの接種をかかりつけ医で受けましたし、帰国後も軽いけがをきっかけにして、10年に一度程度受けるようにしています。
破傷風は、頻度は低いですが(約100人/年/日本全国 *6、Common Critical Curableの、CriticalかつPreventableです。破傷風トキソイドの適応を、毎回確認してあげてください。
2019年6月追記:追加接種は3回必要?1回必要? について *7*8
1968年より前に生まれた → 3回の破傷風トキソイド接種から
1968年以降に生まれた → 1回の破傷風トキソイド接種から(根拠:三種混合DTaP定期接種は1968年以降からなので)