Dr.Yukaの5分間ティーチングブログ

聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 救命救急センター 北野夕佳の5分間ティーチング連載ブログです。日々の臨床で必要な知識を「型」として蓄積するブログです。

脳出血の初期マネジメント_超基本

先日、x月x日 北野が救急外来で診た症例です。

60歳代女性、もともと高血圧、肥満あり。1人で買い物中、歩き方がふらふらしていた。そのあと床に崩れ落ちるように倒れてレベルJCS 100。救急搬送。意識レベルE1V2M4、瞳孔5㎜/2㎜両側緩慢、右上下肢動き悪い。ルート確保血糖チェック(BS180)、頭部CTへ。被殻出血+脳室穿破。 

 

脳出血の「型」を共有します。

 

 

 

脳出血(=ICH, SAHまとめて)の実務マネジメント  *1*2*3

(シアトル版ティーチング

  1. ABC-OMI (常にABCと、oxygen-monitor-IV line)
  2. call neurosurgery stat (即、脳外科コール)
  3. BP management (とにかく降圧!!)
  4. correct coagulopathy (凝固異常・出血素因の補正)
  5. seizure precaution (痙攣注意)
  6. nausea management (嘔気マネジメント)
  7. HOB 30 degree (ギャッチアップ30度)
  8. avoid thin fluid for all neurosurgery patients (うすい補液は入れない)
  9. CTA and skull Xray if SAH (SAHなら、CTAと頭部X線追加)
  10. Consider H2B (or PPI)  

 

上記は、シアトルのレジデンシー中に 文字通り何十回と言わされた「型」です。

私自身、日本で内科医を4年間やった後だったので当たり前のことのように思ったのですが、これを「型」として施設内で毎回言語化して共有されていることおよび、M4(医学部4年生)でもこれが言えること、PGY1はこれが実行に移せることが要求されていることが新鮮でした。こういう基本を「型」にしてしまうことで、それぞれの「型」の中身を蓄積してゆきやすいと実感しました。 

 

ひとつずつ見てゆくと、以下です。

1.ABC-OMI (常にABCと、oxygen-monitor-IV line) :

Airway, breathing, circulationだけでなく、OMI(oxygen, monitor, IV line)も型にしてしまうことで、実務の共有がスピードアップします。

2.call neurosurgery stat (即、脳外科コール)
CT室で画像を見た瞬間に(=救急外来にストレッチャーで戻ってからではなくて)脳外科に即一報することを施設内で共有します。

3.BP management (とにかく降圧!!)

ニカルジピン等をシリンジに準備してCT室に行き、特にくも膜下出血を認めた場合などは、即座にCT室で降圧を始めることを施設内で共有します。

 

4.correct coagulopathy (凝固異常・出血素因の補正)

凝固検査で異常があれば or ワルファリン内服中ならFFP考慮。このcorrect coagulopathyは、消化管出血など、他の病態でも共通に使えて「型」にすることで本来の頭脳労働すべき分野に集中できることを実感します。「DAPT内服中のlife threatening hemorrhageなら、血小板輸血考慮」もcorrect coagulopathyの引き出しに入れていきます。

 

5. seizure precaution (痙攣注意)
これは、抗痙攣薬を入れるという意味ではありません。シアトルでは「seizure precautionの指示」=「ベッド柵を上げておく・ベッド柵との間に硬いクッション挿入」の指示が看護サイドに伝わるという流れでした。当院では、そこまではしていませんが、「脳卒中
」=「痙攣しうる病態であり注意が必要」という認識を教育し続ける意味で、言語化は意味があると思っています。でないと、ルートを取った後、ベッド柵を上げずに離れる事態が必ず発生しますから。。。

 

6.nausea management (嘔気マネジメント)

例えばSAHの症例が、「ゲロゲロ吐いている=頭蓋内圧上がる・再出血のリスク上がる」状態で放置されないように、上記の5と同様の概念で、嘔気・嘔吐は脳出血マネジメントの一部として最重要項目の一つであることを共有します。

 

 

7.HOB 30 degree (ギャッチアップ30度)

誤嚥防止、頭蓋内圧亢進防止目的で、必ず30度程度ギャッチアップを。

 

8.avoid thin fluid for all neurosurgery patients (うすい補液は入れない)

シンプルに、「脳外科症例は、生理食塩水やリンゲル液などの『濃い輸液』を入れる」を共有します。もちろん、例外はありますが、例外は「基本=型」の上に構築した方が混乱しないと思います。

 

9.CTA and skull Xray if SAH (SAHなら、CTAと頭部X線追加) 

これは、各施設の脳外科医と前もってコンセンサスを得ておくのが良いと思います。

 

10.Consider H2blocker (or  PPI ) for stress ulcer prophylaxis *4

これも、議論の分かれるところですので、各施設の脳外科医と前もってコンセンサスを得ておくのが良いと思います。うちは、脳外科と相談の上、H2blockerは入れています。

 

各項目、エビデンス好きの方はいろいろ言いたいことがあるだろうと思います(笑)。ですが、上記を「型」として共有したうえで、それぞれの引き出しの中の議論をして行ければと思います。厖大な領域をカバーする総合内科の若手にとっては、上記の型を圧倒的な土台として、その上に知識を乗せてゆく方が混乱しなくて建設的になれるのでは、と私は思っています。

 

 

 

 

 

 

*1:Hospitalist 2017 vol.5. No.1 pp.105-120

*2:内科ポケットレファランス 9-7

*3:UptoDate, Spontaneous intracerebral hemorrhage: Treatment and prognosis, Literature review current through: Oct 2017 

*4:UptoDate, Medical Complications of stroke, last updated 2017 May 18